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最高裁判所第三小法廷 昭和23年(オ)134号 判決

主文

原判決を破毀し本件を大阪高等裁判所に差戻す。

理由

上告理由第一点について。

原審が証拠により上告人主張の贈与契約の存在しなかつた事実を認定した上、右の認定に抵触する上告人申請の第一審並に原審証人の証言はいずれも上告人からの傅聞証言であつて採用に値しないとして、それらの証拠を排斥したことは原判決によつて明なところである。しかしながらこれを記録について見るに、上告人の申請に係る、第一審証人那須耐成及び先川宅郎に対する各訊問調書によれば同証人等はいずれも右贈与契約の存在した事実を被上告人名方からも聞知したと供述し、また第一審証人徳矢清太郎に対する訊問調書によれば同証人は右贈与契約成立の際、その場で私書証書作成に関与したと供述しているのであつて、それらの証言がいづれも右贈与契約存在の事実を単に上告人のみから聞知したといつているのでないことは極めて明白である。そうだとすると、原判決は右の各証言を単に上告人からの傅聞に係ると誤解して排斥したものであつて、採証の法則に違背した違法があるというの外なく、論旨は理由がある。

よつて他の上告理由に対する説明を省略し、民事訴訟法第四〇七条により主文の如く判決する。

(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 穂積重遠)

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